その壱

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丑の刻 「はぁ…はぁ……。」 たったったったった。 「……。」 ザッザッザッザッザ! 「はぁ…、はぁはぁ、はぁ…!」 たったったったった。 「……。」 ザッザッザッザッザ! 「……。」 何度も何度も同じことの繰り返し。 殺して殺して殺して殺して。 標的が今みたいに逃げることもしょっちゅうある。 「何だよ、何で追ってくるんだよぉ!?」 裸足で逃げ惑うその姿を、侘丸は滑稽とは思わなかった。 もう何度も見たこの光景に慣れているからだ。 「誰か、誰かぁあ!」 誰か? それは誰のことを言っているのだろう。 既に彼に仲間はいないのに。 全て侘丸が殺めたのに。 じゃあそれ以外の誰か? 盗賊である彼を助ける者がいるのだろうか。 だからこうして、侘丸が狙っているのに。 「が…。」 足が絡まり、こける…そんなことももう見慣れた。 「助けてくれ、何でもするから!」 助けて?聞き慣れた。 「銭か?銭が目的か?だったらいくらでもやるから!」 聞き慣れた。それに、彼を殺した方が侘丸にとっては儲けになる。 侘丸は左腰から、脇差を抜く。 ぽたぽたと、それから滴っているのは、男の仲間たちの血であった。 もうこの段階までくれば、すぐに殺れる。 侘丸には癖があった。
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