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「ぬぁ!?晴れているのに、水面が凪いでいるだと!?」
教授の叫び声が周囲にこだまする。
……クソが。失せろ、ハゲ。
貴様ごときが大声をあげたせいで、憧れの菊地先輩が視界から一瞬外れただろうが。
万死に値すんぞワレ。
「教授、他の方もおりますので……」
おそるおそるといった感じで、その菊地先輩がハゲクソ教授に注意をする。
菊地先輩、あんなゴミクズにも優しく接するなんて、なんて優しいんだろう。
ここで、「生徒ごときが教授様に向かって注意などするな!」とかほざいたら、確実に、大学にある教授の私物を画ビョウで埋め尽くしてやろうと思ってたけど、幸いにしてそんなことはなく、オホンと咳払いをすると、何事もなかったかのように説明を始めた。
「あの橋は今から百年ほど前に架けられたもので、歴史的に価値がある。
が、それ以上に、石積みアーチの構造を今に伝える貴重な資料であり、そのアーチの美しさたるや芸術品ともいえるだろう。
しかし、これではその魅力も半減……。
あぁ、遠くからわざわざ来たというのに、なんたる悲劇。
なんたる不幸!
あぁ、先生は疲れた。
しばらく休んでいるから、みんな適当に見て回って来なさい。
先生は休憩してます」
前言撤回。
そのまま倒れこむように近くのベンチに座ってしまった教授。
完全に仕事を放棄したらしい。
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