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「なんか、おかしかったな綾津のやつ」
「そ、そうですね」
私の歩幅にあわせてゆっくり歩いてくれる先輩。
チラチラと先輩の顔を見上げてみれば、目鼻の整った綺麗な顔がそこにある。
時々、私と目があって、ニコリと微笑んでくれるたび、私の顔は紅くなっていく。
いざ二人っきりになれたはいいけど、緊張して何を話していいかわかんないし、せっかく話しかけてもらっても、愛想のない返事しか出来ない。
「前山さん、好きな建築とかあるかな?」
ふぇ!?
「いや、ここけっこう広いから、今日の時間だけだと、全部はまわれないと思うんだよね。
で、前山さんのいきたいとこを優先的にまわろうかと……」
あ、あぁ、"好きな建築"か。
そこが抜けて、"前山さん、好き"しか聞こえなかった。
「あ、あの、私はヨーロッパの石造りの建物とか好きです」
すると、先輩は足を止めた。
「あ、じゃあここなんかいいかな?」
先輩の視線の先、そこには、大きな教会があった。
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