第1章 俺の学園生活、始まり始まり

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「ごちそー様でした!」 「お粗末様でした。なわけないな、今日も美味しかった。」 「自分で言うなよ!美味しかったけど!」 10分くらいで朝食を食べ終わり、着替え等諸々の支度を済ませて家を出る。・・・・・・おっと、忘れるところだった。 「母さん、行ってきます。」 小さな写真立ての中に収まる母に挨拶をし、今日も元気に登校する。 俺の母さん、紗枝(さえ)さんは俺が産まれて3年後、末期のがんで亡くなったらしい。中学生のときに死因を知った。その時は、『もし俺が手のかかる乳児でなければ、俺がいなければ、母さんは健康診断で早期発見ができていたんじゃないか?俺がいなければ・・・。』と自分を責めた。しかし、隣にいるこの毒舌ながら優しい幼なじみのおかげで前を向くことが出来た。 ────────── バシッ 頬に鋭い痛みが走る。 『いってえ!なにすんだよてめえ!』 『なにすんだよ?こっちのセリフだよ、うじうじしやがって。何?紗枝さんはお前を産まなきゃ助かったの?』 『そりゃ・・・。』 『馬鹿じゃない?』 『はあ?』 『紗枝さんにとってお前は初めての子供だよ?俺はお母さんになることはないし、なったこともないから全部は分からないけど、紗枝さんはお前を手放す選択はしないよ。しなかったからここにいるんだろ。』 『・・・・・・。』 『・・・それにさ、がんにも色々種類があるらしいじゃん。紗枝さんのは特に進行が早かったんだと思う。自覚症状だって、明らかなものだったら健康診断で気づくとか遅すぎるだろ。そういう病気なんだよ。』 『でも・・・。』 『でももなにもない。何よりも、お前を罪悪感に苛ませることを紗枝さんは望んでるのか?誰よりも、お前の成長を喜び、望んでた人じゃないのか?』 『!』 『・・・・・・奏汰(かなた)。お前が紗枝さんのために、今出来ることってなんだよ。』 グウー。 『『・・・・・・。』』 『・・・・・・ご飯を食って、風呂入って、寝ること、かな。』 『・・・・・・美味いメシ、作ってやるよ。』 俺に出来ることは、天国で見守ってくれてる母さんを笑顔にすること。つまり、毎日元気に過ごして成長すること。 ────────── ちなみにあの頃の相司のメシは不味かった。俺は自覚のある馬鹿舌なんだけど、そんな俺をもってしても不味いと言わしめるレベル。作ってもらっといて『まっず!』と叫んでしまった。・・・その日が始まりだったな。中華鍋で叩かれる日々の。
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