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幸せは、常にそこにある。
それを感じることこそ、幸せなり。
そんな妄想の幸せの中で、痛みに鈍感になりながら曖昧に生きることの何が幸せだろう。
しかし、痛みに身を晒して生きることもまた、幸せとは言いがたい。
そこに壁があることさえ知らぬ生活なら、閉ざされた環境に気づかずのびのびと過ごすことができる。
が、ひとたび『閉じ込められている』と意識してしまえば、その圧迫感を忘れることは簡単でないだろう。
知ってしまった痛みも悲しみもまたやはり、見ぬ振りなど到底できやしない。
痛みを知ったそのときから、私は、幻想と化した幸せを思い描いて痛みに耐え、多少の笑いで誤魔化して涙を渇かす道化者だ。
そしてそんな幸せもあるだろうと、戯けた結論にすがり付いてまた、今日も歩き出す。
昨日の痛みが癒されぬまま、今日の痛みを受け取るために。
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