遺書

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彼女が一人にならないようにできる限り休憩は他の人と入るように店長として努めた結果か、山下さんに訊いてみると、あの後から更衣室の泥棒は現れていないと言っていました。 もしかすると、設楽さんもなにかしら疑われていると気づいたのかもしれませんが。 しかし、そのようなことをする方というのはいわゆる手癖という奴なのでしょうか。 七月。世間ではもうじき夏休みが来る頃でした。 その日はシフトの関係で彼女が一人でお昼休憩に入りました。 更衣室に向かいます。 はっとしました。 しばらく鳴りをひそめていたので忘れていましたが、根本的な解決がなされた訳でも彼女の疑いが晴れた訳でもないのです。 私は彼女に見つからないように後をついていきます。 心臓が口から飛び出そうという表現がわかるようでした。 廊下の陰から彼女が更衣室に入るのをじっと見つめます。 彼女が入りました。 おそるおそる更衣室まで歩きます。 まるでこちらが悪いことでもしているようです。 すぐに入っても現場は抑えられない、そう思った私は数を数えながら懸命に呼吸を整えます。 百もとうに数え終わり、意を決してドアを開けることを決めました。 更衣室のドアを開ける手がかすかに震えています。 気づかれないようにゆっくりと慎重に開けました。 今までにないほどの緊張感でした。 更衣室のロッカーから荷物を物色する彼女がいました。 彼女は他の人のバッグからサイフを取り出し、ポケットに入れていたのでした。 立場上、見たくもなかったというのが本音です。
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