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タクシーに乗り込んだはいいけど、何を話していいかわからないからお互い無言。
…今が絶好のチャンスなのに……
そう思っても、私の口はまるで強力な接着剤をつけられたように口が開かない。
それでも様子を伺おうと右に座る部長を見る。
綺麗にセットされた黒髪に、女の子が羨むほどのバサバサと生えるまつげ。
パッチリとした二重に、色っぽい唇……
社内で、みんなが部長の隣に並びたがるのも頷ける美しさ。
「村瀬さんさ」
「は、はいっ…」
私の方は見ず、窓の方に視線を向けたまま私に話しかけてきた。
「…いや、何でもない。」
「そ、そうですか……」
そのまま、より視線を窓の方に向けてしまった部長はそれ以上、何も話しかけてこなかった。
駅近くの大手居酒屋チェーンの前に止まったタクシーから降りて、私と部長は奥のお座敷へと通された。
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