53人が本棚に入れています
本棚に追加
若旦那様に抱かれてもまったく問題はない。
私だけというものでもないけど、ずっと目をつけられていたし、それだけよくもしてもらえてきた。
若旦那様以外の人と言われると抵抗はある。
抵抗はあっても受け入れるしかない。
その前に…というものは、なんの予告もなく、八杉姐さんに呼ばれて部屋にいくと、そこにあの藤弥さんを狙う遣り手と二人で待っていた。
「鈴音、わっちのことは知ってるだろうが、こっちは美寿々っていう新しい遣り手だ。おまえと関わることは一切なかったから知らないだろう?」
なんていう八杉姐さんのあの遣り手の紹介から始まって。
知らないけど知っている。
番頭を見張っている遣り手の中では新しい遣り手。
八杉姐さんにしっかりと拘束されて、みすずという名のあの女が張り型を手にする。
「おとなしくしてね。優しくするから」
なんていう言葉を笑顔で言って、私の股を開かせて。
なぜかどうしてか、その女だけはいやで。
このまま蹴り飛ばしたくなって、股を開けない。
これが嫌なんじゃない。
藤弥さんにしてくれと望むつもりはない。
相手が嫌なだけ。
番頭にやられるよりはましだと自分を騙すように思っても無理。
「八杉姐さん、離してください」
私を捕まえる背後の八杉姐さんに言っていた。
「おや。おまえが怖じ気づくとは思わなかったよ。どうした?こわいか?これが終われば、あとは手慣れた若旦那様がやってくださるさ」
「今日は…あかん。お願いやから離してくださいっ」
泣きそうになってきた。
目の前にいる美寿々姐さんは油を手にして、張り型に塗りつけて、その準備を進めている。
その顔を見たら、どうしても嫌だった。
あずま野姐さんにされていたら、きっと素直に受け入れた。
相手がいや。
どうしても受け入れたくない。
自分でやるほうがいいくらい。
涙がこぼれて、八杉姐さんは私を離してくれる。
「うち、自分でやるっ。やられたないんですっ」
私は八杉姐さんを振り返って強く拒否。
「女にやられるというのが嫌なのかい?鈴音なら客ともうやってるだろうが、こういう儀式なんだ。わかっておくれ」
やってないし。
なんでそう、すぐにもうやってるほうに思われるのか。
橘姐さんについていたときに、武士に客になれと望んだ話からだろうか。
それとも若旦那様や黒を連れてきたことだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!