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藤弥さんが楼主になる覚悟を決めると、まわりの動きは早かった。
番頭が番頭としてちゃんと働かずに遊女と遊んでばかりいなければ、きっとそういうことにはならなかった。
楼主であるオヤジ様が番頭を若い衆におろして。
番頭の位置に藤弥さんを置くことにして。
それだけで何かが変わるわけでもないのだけど、見て見ぬふりをしていた番頭の遊女遊びに咎めをつけて、番頭を廓から追い出すことにした。
もちろん番頭が素直に出ていくはずもなく、あの手この手で番頭に戻るでもなく、楼主になろうと画策。
その画策はもちろん美寿々姐さんに知られるところにあって、美寿々姐さんが楼主に報告。
画策は簡単に潰されていく。
若い衆として不手際を出して、藤弥さんを追い込むようなこともしたけど、それは幾さんが番頭代理を長く勤めた手際で綺麗に払ってくれる。
そしてその不手際がまた番頭を追い込むことになる。
あとは番頭になった藤弥さんの指示で動かず、他の見世に利益をあげるようなことをしてくれたり。
楼主を殺す計画をたててくれたりして。
番頭の行動すべて楼主に筒抜け状態で。
元三浦屋番頭の敏三は、誰にも庇われることなく、私刑を受けたあと、吉原を追い出された。
敏三の私刑は殴る蹴る、5日ほどの絶食、裸で吊るす、髷を落とすなどで。
まぁ、私が敏三に受けたものよりは甘いとも思えるけど、敏三にはかなりの侮辱となっただろう。
仕返ししてやるの藤弥さんの言葉が本当になった。
楼主の正妻、敏三の母のおかみさんはかなり前から敏三を放置していて、我関せずでまだ三浦屋にいる。
息子がどうなっても関せずでいられるのは、このおかみさんも遊女以上の狐なのだろう。
自分さえよければいい。
ここはそういうところ。
夜も多くの明かりが灯って、賑やかな酒宴が開かれて、明るく華やかな町なのだけど。
闇はそこら中にある。
闇はあっても暗く沈んでばかりいてもどうしようもない。
どうせ生きるなら少しは楽しく生きたいもの。
自分の身の上をかえられなくても、気は持ちよう。
鳥籠はそんなに狭くもない。
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