file 1 心理学研究部の美少年

11/46
前へ
/283ページ
次へ
私は天涯孤独の身だ。 殺人犯の汚名を着せられている父が生きて現れない限り……。 遺体が見つからなかったというだけで、父はもう死んでるのかもしれないのだから。 そう思って15年間生きてきた。 「他人の空似じゃないかな?」 私にそっくりな少女を見たという生徒にはそう答える。 「あー!世の中には自分にそっくりな他人が3人はいるっていうもんねー」 「人口増加に伴ってもっと増えてるらしいわよ。民族が同じなら尚更その確率は高くなる」 「えー、なら身近にいてもおかしくないよね」 「そう。……おかしくない」 2年A組の美術の時間。 普段なら私語を許さずにデッサンに集中させるところだけど。 生徒の描く絵を見守るだけでは、どうしても頭に余白が残り、過去のことや最近の怪奇な現象を考えがちになる。 なので、つい生徒のお喋りに付き合ってしまった。 部屋を見渡せば、集中して作画している生徒の少ないこと。 基礎教科ではないので、手を抜く生徒が多いのも現実だ。 ため息をついて、生徒達のキャンバスを覗いていく。 「さっきの先生のそっくりさんて、もしかしてドッペルゲンガーじゃない?」
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

204人が本棚に入れています
本棚に追加