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私は天涯孤独の身だ。
殺人犯の汚名を着せられている父が生きて現れない限り……。
遺体が見つからなかったというだけで、父はもう死んでるのかもしれないのだから。
そう思って15年間生きてきた。
「他人の空似じゃないかな?」
私にそっくりな少女を見たという生徒にはそう答える。
「あー!世の中には自分にそっくりな他人が3人はいるっていうもんねー」
「人口増加に伴ってもっと増えてるらしいわよ。民族が同じなら尚更その確率は高くなる」
「えー、なら身近にいてもおかしくないよね」
「そう。……おかしくない」
2年A組の美術の時間。
普段なら私語を許さずにデッサンに集中させるところだけど。
生徒の描く絵を見守るだけでは、どうしても頭に余白が残り、過去のことや最近の怪奇な現象を考えがちになる。
なので、つい生徒のお喋りに付き合ってしまった。
部屋を見渡せば、集中して作画している生徒の少ないこと。
基礎教科ではないので、手を抜く生徒が多いのも現実だ。
ため息をついて、生徒達のキャンバスを覗いていく。
「さっきの先生のそっくりさんて、もしかしてドッペルゲンガーじゃない?」
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