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震える指でビニールを剥ぐと、中には、霜で埋め尽くされた赤ちゃんの姿が……。
「……星乃……」
顔の霜を取り除く。
「……カワイイ赤ちゃんだったんだね」
有本くんも恐怖心は抱いてないのか、遺体を食い入るように見ていた。
十五年間も放置されていたとは思えないほど、遺体はとてもキレイ。
火災の前にこちらへ隠されていたのか、火傷のあともない。
ミイラ化していない頬は、さきほどまで生きていたみたいに柔らかに見えた。
「産着に、名前が書いてある……きっと産院で着せてたのね」
″滝田 星乃″
お父さんの字だ。
自分の子供じゃないと分かっていても、出産の準備をちゃんとこなしていたんだ。
お母さんの生む子供だから、私の妹だから、
お父さんは不貞を許して育てていこうと決めてたんだ。
……それなのに、
私は、星乃を殺した。
お母さんの為だけじゃなく、お母さんを独り占めしたくて。
私は、星乃を抱き締めたまま、
スマホを取り出してある人に電話をかけた。
さすがに地下だけあって、電波は入りにくかった。
「もしもし?」
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