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「こちらになります」
船の乗員に案内された俺らの部屋は、シャワー付きで、ベランダにも出られるようだ。
室内はシングルベッドが2つ。ほかには一人掛けソファーが対で真ん中に小さ目なテーブルがあるだけ。
「これはここでいいな?」
俺が持っていたバッグを棚の上に置いてやると
「あ、ありがとうございました。重かったのにすみません」
なにが入っているのか、なにかごつごつした感じが背中に当たっていた。
「そっちは大事そうにずっと抱えていたけど、なにが入ってるんだ?」
手前の一人掛けのソファーに、抱えていた荷物を置いている彼女に問いかけると
「母なんです」
少し、ぎこちない感じで教えてくれた。
「お母さん?」
お前の母親は小人か?って突っ込みは入れられないような雰囲気だ。
「新しくお墓を建ててもらったのが出来上がったので、納骨に行くところなんです」
すでに出港してしまった船の中と言うことで、すなおに大島に向かう理由を語り始めた彼女。
「いつ、お母さんが亡くなったんだ?」
一応、荒木戸の直属の上司と言う立場の俺だけど、こいつから忌引きの申請は受けた覚えがない。
「ちょうど、今年のお正月休み中でしたので、会社を休むことなく見送る事が出来たんです」
俺らの知らない内に、こいつは家族を亡くし、また、それを隠し通していたと言う事実に遣り切れない気持ちが湧いてくる。
そうまでして隠さなくたって・・・・・
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