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第8話extra Sweet Die
文化祭二日めの土曜日は一般開放されて、廊下を通るにも、蛇のように曲がりくねってしか進めないほど人が多い。
青南は有名校だけに、在校生の家族だけでなく、他校からも、そして来期の受験生とその親たちも学院見学を兼ねて数多く訪れる。
それゆえに出し物は手が抜けないところだ。
叶多のクラスのピクセル壁画は無事に間に合った。
ごく限られた人しか完成図を知らなかったピクセル壁画は、横六メートル、縦三メートルと巨大だ。
体育館の一面に飾られている。
今期の春にあった体育祭のとき、ブロックの象徴として描かれた麒麟の絵をクラス全員で囲んでいる写真だった。
高等部をまもなく卒業するからこそなのか、見ているとなんだかじんとくる。
全員ではじめて完成した壁画を見たときの一瞬しんと静まった空気は、叶多だけではなくだれもに似た思いがあることを証明している。
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