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都内、10階建て雑居ビル内に生田目社長の事務所がある。
室内には誰もおらず、生田目が社長兼社員のようだ。
部屋の真ん中にテーブルとパイプ椅子が置いてあるだけで、他には何にも無い。
二人がテーブルを挟んで、向き合う形でパイプ椅子に鎮座する。
「僕の言う事をよく聞いて欲しいのですが」
男の顔を覗き込むように、慎重に頷く法子。
「来週の土曜日にミスコンテストが開催されます、その大会に参加して下さい。
参加手続きはこちらで準備します、場所は秋葉原ホテルです」
「私は太っているので、ダイエットしたほうが良いですか?」
法子の瞳は真剣だった。
「いえいえ、このままで結構です。このままで」
「はぁ?」
男の奇妙な話に、ため息をつくような返事。
「蒲須田さんには、コスプレをお願いしたい!」
「私もコスプレが大好きなんです!セーラームーンがいいですか?
それとも、ラブライブがいいですか?」
いよいよ、法子も乗り気だ。
「衣裳はこちらで用意します、楽しみは後ほど・・・」
「それでは、こちらにサインを」
男がテーブルの下から書類を取り出し、法子の前に差し出す。
すかさず、ペンでサインをする。
「それでは、後日秋葉原ホテルでお会いしましょう」
生田目が右手を差し出すと、求めに応じて握手する法子。
既に、門限は過ぎてしまっていた。
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