109人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
☆
厳然たるホールを埋め尽くす、厳粛な空気を孕んだ緊張感。各々と課題曲を披露するプレイヤーが、ひとり、またひとりと福音を奏で舞台を後にする。
幕裏で待機する僕の許に、拍手喝采が聞こえ届いてくる。次のプレイヤーが演奏を終えると、いよいよ僕の出番になる。
けれど僕の心は凪いだままだ。すでに僕の心は、次のコンクールに目を向けているからだ。今般のコンクールなど足がかりでしかない。
このコンクールで優勝を果たせば、次なるステップへと飛躍できるんだ。
ピアノをかじる奴なら誰もが憧れる、世界三大ピアノコンクール。そのなかでも、最も有名なコンクールとして、『フレデリック・ショパン国際ピアノコンクール』がある。
作曲家兼ピアニストとして有名な、フレデリック・フランソワ・ショパンの名を冠したコンクール。彼の命日にあわせて、十月十七日に出身地であるポーランドで開催されるコンクール。
そうだ、僕は絶対に優勝してみせる。そしてショパンの生まれた地に赴き、必ず名声を手に入れてみせる。
最初のコメントを投稿しよう!