第二楽章 ・ 夢と野望と駆け引きと

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 ☆  厳然たるホールを埋め尽くす、厳粛な空気を孕んだ緊張感。各々と課題曲を披露するプレイヤーが、ひとり、またひとりと福音を奏で舞台を後にする。  幕裏で待機する僕の許に、拍手喝采が聞こえ届いてくる。次のプレイヤーが演奏を終えると、いよいよ僕の出番になる。  けれど僕の心は凪いだままだ。すでに僕の心は、次のコンクールに目を向けているからだ。今般のコンクールなど足がかりでしかない。  このコンクールで優勝を果たせば、次なるステップへと飛躍できるんだ。  ピアノをかじる奴なら誰もが憧れる、世界三大ピアノコンクール。そのなかでも、最も有名なコンクールとして、『フレデリック・ショパン国際ピアノコンクール』がある。  作曲家兼ピアニストとして有名な、フレデリック・フランソワ・ショパンの名を冠したコンクール。彼の命日にあわせて、十月十七日に出身地であるポーランドで開催されるコンクール。  そうだ、僕は絶対に優勝してみせる。そしてショパンの生まれた地に赴き、必ず名声を手に入れてみせる。
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