1・キミに胸キュン

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オフィス街の一画にあるその洋菓子店は、 フランスで修業してきたという ショコラティエの作るチョコレートが 美味しいと評判だった。 ただし、美味しさに比例して、外国の 高級チョコレート並みにお値段が高いので、 もっぱらこの近辺の会社の贈答品などに 利用されることが多く、一般の利用客は少ない。 店舗部分が一坪ほどしかない小さなその店に、 初めて先輩に連れられて来た時は、それで 経営が成り立つのかと、幸は他人事ながら 心配になったものだ。 普段はそんな、限られた客層しか見られない この店も、今日に限っては様子が違っている。 なぜならば、今日はバレンタインデー。 老若男女が色めき立つ、一大イベントの 当日だから。 幸も大勢の若い女性の例に漏れず、 洋菓子店を訪れていた。 ただし、自分自身のためでは無く。
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