2728人が本棚に入れています
本棚に追加
「絢香ったら、なんでもっと早く
買わなかったのよ?」
混雑する店内をちょこちょこと横歩き
しながら、幸は同期の友人へ苦情を言った。
普段の様子からは信じられないほどの
多くの客が店内にひしめき合っていて、
思い通りに動くこともままならない。
かといってこの寒空の中、外で待つことを
考えるとゾッとする。
冷え性の幸には、寒さは天敵だったから。
「さっき言ったでしょう。昨夜やっと決心
したの、やっぱり今日告ろうって。
本命チョコはやっぱり特別感が必要だもの」
「それはそうだけど、そんなに衝動的に
告って上手くいくの?本命だったら
なおさら、もっと計画的に……」
これが幸がここに居る理由。
急に片思いの同僚に告白する気になった友人は、
特別なチョコを手に入れたいと考えた。
確かにこの店のチョコならば、特別感が
あるのは間違いないだろう。
そういう訳で、絢香は社用の買い物で何度も
この店を訪れている幸を、チョコ選びのための
アドバイザーに任命したというわけだ。
最初のコメントを投稿しよう!