1・キミに胸キュン

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「絢香ったら、なんでもっと早く 買わなかったのよ?」 混雑する店内をちょこちょこと横歩き しながら、幸は同期の友人へ苦情を言った。 普段の様子からは信じられないほどの 多くの客が店内にひしめき合っていて、 思い通りに動くこともままならない。 かといってこの寒空の中、外で待つことを 考えるとゾッとする。 冷え性の幸には、寒さは天敵だったから。 「さっき言ったでしょう。昨夜やっと決心 したの、やっぱり今日告ろうって。 本命チョコはやっぱり特別感が必要だもの」 「それはそうだけど、そんなに衝動的に 告って上手くいくの?本命だったら なおさら、もっと計画的に……」 これが幸がここに居る理由。 急に片思いの同僚に告白する気になった友人は、 特別なチョコを手に入れたいと考えた。 確かにこの店のチョコならば、特別感が あるのは間違いないだろう。 そういう訳で、絢香は社用の買い物で何度も この店を訪れている幸を、チョコ選びのための アドバイザーに任命したというわけだ。
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