1・キミに胸キュン

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「こういう事は勢いも大切だと思うの。 『思い立ったが吉日』って言うでしょう? 今日告らなかったせいで、後悔することに なるかもしれない。そんなのは嫌だもの」 それも一理あるとは思う。 何事にも慎重なタイプの幸にはきっと できないことだけれど。 手早くチョコレートを選び、いつもとは 違う位置に設置されたレジの列の最後尾に つく。 なんで私まで。幸はそう思ったが、お菓子を 選ぶ客とレジに並ぶ客。それらでいっぱいの 店内から外に出るためには、強引な手段で 押し退けなければ無理のようだ。 そんなみっともない真似をする気にはなれない。 渋々列に並びようやく前の絢香の番。 やっと外に出られると密かに胸を撫で下ろした 幸の目に、レジの横に置いてある籠が目に入った。 籠には詰め合わせのチョコの小箱、 かわいらしく袋詰めされた焼き菓子が 数個ずつ収められている。 中身の見本の写真を見ると、数は少ないけれど チョコのラインナップは幸の好みばかり。 せっかくここに来てこうして並んでいるのだし、 ひと箱買おうか。 そんな考えが頭に浮かんだ。
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