8人が本棚に入れています
本棚に追加
帰って来たばかりらしいキュイールが倉庫姿を見せた。
新しい、開発されたばかりのまだ珍しい車も何台かあるから、きっとそれを見に来たのに違いないです、とオリギトが呟いて、それを聞いたスェマナは笑みを漏らし、ハンキレンダはつい噴き出してしまったのをごまかすように、咳の真似事などをした。
「お前、ヤヅァムか!?」
広い倉庫の中で、その声はやけに響いた。
下働きの男が一人、ズンズンとキュイール、そして側に控えるヤヅァムに向かって進んでいる。
「村を壊しやがって……この、バケモノめ!」
カラン、とどこかで何かが落ちた。
ズンズンと無遠慮に領主に向かって迫る男を、騎士であるオリギトが手際よく取り押さえる。
すばやい動きの筈なのに、随分とそれはゆっくりとして見えた。
ヤヅァムの顔が真っ青で、今にも倒れそうに見える。
「お前が!ヤヅァムが!全部焼きつくしたんだろ!」
そんな話、スェマナは知らない。
聞いていたかも知れないけど、知りたくない。
男は同じ村の者だったのだろうか?スェマナの記憶はあまりはっきりとしない。
今にも倒れそうな顔色のヤヅァムに、男は叫ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!