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「ヤヅァムがやったんじゃ、ないんでしょ?信じかかるから、ヤヅァムのこと……」
歩けるくらいに落ち着いたヤヅァムの手を引いて、スェマナはキュイールの部屋に向かう。きっとそこにはハンキレンダもいるはずだ。
ヤヅァムが何をして、何をやっていないのかはさっぱりわからないが、あの二人ならば上手く聞き出してくれるだろう。
「俺は……違うんだ、俺がやったんじゃないんだ……」
キュイールの部屋に行くと、先程の商人の下働きの男もいた。ヤヅァムと手を繋いでいなければ、また逃げだしたのではないかというくらい、ヤヅァムの身体がひきつるのがわかった。
下働きの男はミシィハと名乗った。
「あの村に、恋人がいたんでさぁ」
ミシィハは今まで、村を巡る商人と共に旅をしていたという。あの日は近くの村から、恋人に会う為に村を訪ねるところだったそうだ。
「村に近づくにつれて、異様な感じがしたんでさ。あわてて行ったら、その男が」
……ヤヅァムが、巨大な炎を出現させ、村を焼き払い、そして走り去って行ったのだそうだ。
「村に残ったもんは、焼け跡だけ。何も……何も残らなかった……コイツが……コイツが!」
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