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ハンキレンダが、冷たい光を湛えた目で自分を見ている事に、スェマナは気がついた。
「アタシ……わた、しは、あのとき、畑にいたんです。畑は村から少し離れてたし、谷間だし、風上にいたし」
村の外れ、急な坂を延々と下った先にイァサムの畑はあった。
あの頃のスェマナは、一日のほとんどをイァサムの畑で過ごしていた。「あの子はイァサムにとりつかれている」とからかわれていたくらいである。
あの日もそうだった。
「村に入ったら、人が倒れてた」
痛いと思った。
ヤヅァムの、無意識にだろう、握り込む手が痛い。
顔が青い。カタカタと震えている。
「いっぱい、人が倒れてた。見たことの無い獣がいっぱいいて、それで、俺は」
「焼いたのか」
キュイールに静かに尋ねられ、ヤヅァムは緩く首を振った。ハンキレンダもミシィハも、オリギトも、ヤヅァムの話をじっと、聞いていた。
「あのとき、俺、初めて魔法を使った。見たことの無い獣を全部倒して、生きてる人が居ないか、探した……でも」
ヤヅァムはまた、子供のように泣き出した。
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