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高台の森にいたシュントに、止めを指したのはヤヅァムだ。
スェマナが知っているシュントは大人の腰の高さ位なのに、見上げる程の大きさになっていた。
シュントは、大きさのせいで手強かった。
高台の森は安全な場所とは言えない、と判断された。
あの日逃げ込んだ森の中に、転移の魔法を使う為の簡易な小屋は建てられた。 小屋、といえども運ぶものの大きさを考慮して、ドアはとても大きく作られている。
その日。
ヤヅァムが魔法で粗末な小屋のドアと、領主館の、薄暗い倉庫のドアを転移の魔法で繋ぐ。
開いて見えたものは、まず、濡れたように黒光りする敷石。
明かり取りの、小さな窓から差し込む光。
ずらりと規則正しく並ぶ、人と、馬、荷車。
そこには王国の誇る騎士団と、軍勢が出陣を待っていた。
装飾的な防具を纏い、剣呑な光を湛えた面持ちの騎士団長が雄々しく先頭にいた。
その隣に、魔法の杖を手にした凛々しい魔法使いもいる。
足並みというものは、本当に綺麗に揃うとひとつのものに聞こえるらしい。
馬車を三台並べても余裕がありそうな、巨大なドアはこの今日の、このために用意された。
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