決行

4/6
前へ
/88ページ
次へ
高台の森にいたシュントに、止めを指したのはヤヅァムだ。 スェマナが知っているシュントは大人の腰の高さ位なのに、見上げる程の大きさになっていた。 シュントは、大きさのせいで手強かった。 高台の森は安全な場所とは言えない、と判断された。 あの日逃げ込んだ森の中に、転移の魔法を使う為の簡易な小屋は建てられた。 小屋、といえども運ぶものの大きさを考慮して、ドアはとても大きく作られている。 その日。 ヤヅァムが魔法で粗末な小屋のドアと、領主館の、薄暗い倉庫のドアを転移の魔法で繋ぐ。 開いて見えたものは、まず、濡れたように黒光りする敷石。 明かり取りの、小さな窓から差し込む光。 ずらりと規則正しく並ぶ、人と、馬、荷車。 そこには王国の誇る騎士団と、軍勢が出陣を待っていた。 装飾的な防具を纏い、剣呑な光を湛えた面持ちの騎士団長が雄々しく先頭にいた。 その隣に、魔法の杖を手にした凛々しい魔法使いもいる。 足並みというものは、本当に綺麗に揃うとひとつのものに聞こえるらしい。 馬車を三台並べても余裕がありそうな、巨大なドアはこの今日の、このために用意された。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加