8人が本棚に入れています
本棚に追加
大人数、圧倒的な武力で、魔物に占拠されていた村を人の手に取り戻す。
その作業を、スェマナはイァサムの畑の側から眺めていた。
時折、こちらにも流れてくる魔物を数名の騎士達と倒していく。
空に巨大な、光でできた模様が描かれた。
その中心は、あの井戸の辺りだ、とスェマナはどこか他人事のように、雑草の生い茂る地べたに座り込みながら思っていた。
きつい坂を登って、村のあった場所には、燃えかすと、焦げた石、土、雑草と、魔物だったものしかない。
向こうのほうには得意そうに、仲良くなった数人の騎士達と一緒になって、上気した顔を綻ばせていたヤヅァムがいた。
きっと、ヤヅァムは村を取り返すことが出来たのだろう。
ここには新しく建物が建ち、入植者達と新しい村が作られていく。
前に工夫の案をいくつか話していたから、これからの村は水汲みだって楽になるはずだ。
村と同じように荒れ果てた、イァサムの畑にはまばらに実が生っていた。
「スェマナ」
追いかけてきたのか。ヤヅァムの声は希望に弾んでいる。
「ヤヅァム、あたし、この畑にたくさんのイァサムの実がなるところが見たい」
最初のコメントを投稿しよう!