プロローグ

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プロローグ

人の波にあふれていて、ちょっとボオッとしていれば、誰かの肩にぶつかってしまう。 そんな風に賑わっている駅前なのに、 「はあっ、はあっ、はあっ」 透子の息遣いしか聞こえないのは、何故だろう。 こんな人ごみの中で、まるで自分ひとりだけが浮きあがっているよう。 ふと気づいた時から、ずっと、透子の後をつけてくる気配。 何故、自分を? いったい何の目的で? まったく身に覚えがないから、透子は不気味でしょうがない。 誰かに助けを求めようとしても、透子の視界に入る人は、みんなサッと顔をそらしてしまう。 こんなにもたくさんの人がいるのに、誰も透子と目を合わせてくれようとしない。 でも、たとえば、親切な人から、 「何かお困りですか?」 声をかけられても、透子は上手く説明できるだろうか。 自信はない。 なぜなら、透子を怯えさせる相手は、けして正体を現そうとはしないのだ。
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