プロローグ

4/4
111人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
「こんなところから落ちたら大変だよ。俺の弟も――」 「弟?」 透子が尋ねかけると、 「いや何でもない。気をつけて。貧血?」 男は首を振って、逆に心配そうに聞いてくれる。 透子ははっと、階段の上を見上げてみた。 そこには、忙しなく行き交う人々が、階段を行き来しているだけだ。 怪しい人影など、どこにも見えない。 「キミ?」 透子が返事をしないのを訝しく思ったのか、男がちょっと首をかしげてくる。 今度は逆に透子が首を振って、 「……いいえ。大丈夫です。ありがとうございました」 礼を言って、頭を下げた。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!