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ところが、久しぶりに会った鈴音は、ひとりの美少女を伴っていた。
少女は、ちょっと遠慮がちに、鈴音のシャツの裾をつんつんと引っ張っている。
ほっそりとした肢体に透き通った白い肌。
大きな瞳をふちどるのはパサパサと揺れる長いマツゲ。
まるでよく出来たビスクドールみたいに綺麗な顔。
誰だろう。
鈴音は確かひとりっこだったから、妹とかではない。
透子のいぶかし気な視線に気が付いたのか、鈴音は、
「あ、紹介するね。冬依くん。その……、春さんの弟なの」
おずおずと紹介してくれた。
鈴音の言う春さんとは、電話で聞いていた、確か鈴音の婚約者の名前だ。
そう、婚約者の……。
でもそれとは別に、今、驚くべきことを聞いた気がする。
「え、弟?」
そう言った風に聞こえた。
少女は確かにパンツスタイルだが、それでも、
「……お、男の子なの?」
信じられない。
「ぼく、来生冬依です。こんにちは」
冬依くんは礼儀正しく挨拶をくれたけれど、にっこり笑う顔は天使の微笑み。
思わず見惚れる可愛らしさだ。
「……千影、透子です」
なんとか名前だけは返したが、冬依に比べたら、その挨拶の出来は0点だ。
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