113人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだったの。マンションが火事――」
とりあえず目についたファミリーレストランに腰を落ち着けて、鈴音の話を聞いてみれば、驚くべき事実が明らかになっていった。
なんと鈴音は、住んでいたマンションが全焼して、身体ひとつで焼け出されたのだという。
「そんな大変だったなんて、知らなくてごめんね」
透子はつい謝ってしまう。
「ううん。透子は北海道だったし、知らせても心配させるだけだから、わざと言わなかったの。こっちこそごめん」
側にいたなら、きっと何を置いても駆けつけるだろうが、いかんせん透子は北海道だ。
距離のハンデがありすぎる。
「でも、それがきっかけで恋人と同棲することになったのかぁ。で、一緒に暮らしてみてこの人ならって婚約を決めたの?」
透子が納得した、と言ってみれば、
「ううん、ちょっと違うんだけどね」
鈴音は複雑な顔をして、対面に座った冬依の方に目をやった。
最初のコメントを投稿しよう!