第1章 3000万のベッドイン

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 整った、それでいて色気のようなものがにじみ出る顔。  その唇を、いつものように皮肉気に歪めながら。 「なんで――」 「お前から貰った金は、使う気になれなくってな」  エンドは頬に当てた札束を離す。  ぽろりと、まるで紙屑か何かのように落ちる100万。 「いつか、こうしたいと思ってた。ちょうど30回分――3000万円。今が良い機会だ。……それに、こうすればお前を……いや」 「ぐ……」  エンドは冷たい声で何か言いかけたが口を閉ざす。  続く言葉は俺の喉から絞り出された音だけだった。  出そうと思ったつもりはないのに。  ぐらりと、世界が揺れた。  ここは俺のオフィス。  俺一人しかいない会社の、俺だけの城。  勝手知った場所の筈。  なのに、目の前にこいつが、エンドがいるだけで驚くほど不安定な場所になる。 「どうする、肇(はじめ)」  戸惑う俺を揶揄するように、名前を呼ばれた。  妙な違和感。  ああ、そういえばエンドはいつも、俺を『瑠津(るつ)さま』と呼んでいた。  もう、客じゃないんだ。呼捨てにも、される。  ――だけど、どういうつもりなんだろう。  こいつは、一体何を考えているんだ?  あのことを、知ってるんだろうか……いや、知らない筈がない。  さっきの今で、このタイミングで3000万円なんて。
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