第1章 3000万のベッドイン

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 扉から、音がした。  次いで、誰かが立ち去る足音。  軽快なその音は、どこかあいつを思い出させた。  そして次の瞬間、俺はスズキの手を振り払っていた。 「おや……」 「い、今すぐっていう道理はないだろ? 銀行にだって行かなきゃならないし」  動揺が、俺の息を乱れさせる。  その呼吸をどう取ったのか、スズキは肩を震わせて笑う。 「は。は、は…… そうだねえ。少し性急だったねえ」  そしてゆっくりと俺から離れる。  自分が解放してやったのだと見せつけるように。 「それでも、なるべく早い方がいいからね。……来週の月、いや火曜日でどうだろう?」 「……分かった」  実の所、全く期間は足りなかった。  まともに資金を確保するためには2、3週間は欲しい。  それでも、今、この場から逃れたい。  それだけの為に、俺はその提案を受け入れてしまった。  ――それから、1時間と経たないうちに。  3000万円の方から俺の所にやって来るとは思いもしなかった。
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