第1章 3000万のベッドイン

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 改めて、目の前のエンドを見る。  隙のないスーツを着こんで、無表情を張り付けた営業モード。  こんな時、“遠藤”の影は微塵もない。  どこまで、知ってるんだろう。  間違いない。  あの時の足音は、こいつだ。  だけど何故、こいつが3000万円を用意してるんだ。  もしかして気づいているんだろうか。  この状況の原因が、この間のアレのせいだということに―― 「どうする?」  エンドの声で我に返った。  そうだ。  決めなきゃいけない。  とはいえ、既に俺に他の選択肢はなかった。  ただ目の前のルートに、形ばかりの承認をするだけ。 「……頼む」  それでもせめて、屈したと思われない様に。  声だけは強く出そうとしたつもりが、その弱々しさに唇を噛んだ。  エンドはそんな俺に構わず上着を脱ぐと、タイを緩めた。  掘りが深く鼻筋は整って、日本人離れした端正さと精悍さが混在しているその綺麗な顔に、口元だけが皮肉気に歪む。  初めて会った時と全く変わらない。  ――どうにも、好かない表情だった。
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