第1章 3000万のベッドイン

6/13
前へ
/81ページ
次へ
「……どうすりゃいい?」  3000万円の札束に囲まれながら、対峙するエンドに問いかける。  3000万円分の契約を履行しようとしているようにはとても聞こえない、弱々しい口調だった。 「分からないか?」  エンドは無感情な目で俺を見下ろしている。  俺に買われた時ととは、全く違う視線で、態度で。 「……お前が考えろ。買われたのは、お前なんだから」 「わ、分かってる!」  戸惑っている俺に、エンドからの追い打ちがかかる。  歯噛みするが、契約は履行されなきゃいけない。  覚悟を決めて、エンドに近付く。  肩に手を置き、一方の手でネクタイを掴み、顔を近づける。  ……こいつ、屈みもしねえ! 「ん……んっ」 「……」  精一杯背伸びして、唇を合わせ、離す。 「……で? 終わりか?」  エンドは馬鹿にしたように鼻を鳴らす。 「前の彼氏に、そんな事も教わらなかったのか?」 「う、うるさい!」  シュウのことを引き合いに出されて、ついカッとした。  再度乱暴に唇を合わせる。  知ってる。この先の事くらい。  シュウにも……こいつにも、教わった。  だけどやっぱり、それ以上進むことができなかった。  固まっている俺の唇を、温かいものが割った。 「ぅん……っ」  エンドの舌だ。  ……そういえば、こいつは最初から手馴れてたな。  侵入してくる舌の感覚に、こいつとの初めてのときの記憶が呼び起こされた。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加