第1章 3000万のベッドイン

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「全て、お任せください」  あいつはそう言って俺を包み込むように抱き締めた。  その腕はあくまでも優しく甘いように感じられた。  それが、表向きだけの空虚なものだったとしても。 「う、ぅ……」  蕩けるように甘く、優しく、だけど何処か拭いきれない冷たさの残る記憶の中のエンドの舌。  それとはまるで違っていた。  舌は、咥内をゆるりと蠢く。  俺の舌を絡め、吸い、歯茎のひとつひとつをなぞり、翻弄する。  いつものキスとは、違う。  エンドを買ったときのキスは、あくまでもこれから始まる情事の前の事務作業。  それ以上もそれ以下の意味合いも持たなかった。  だけど、これは、何だ。  深く深く繋がるような、まるでこれ自体に何か意味があるかのような行為。  それを戸惑うより与えられる刺激の方が強烈で、全てを忘れてしまいそうになる。  違う。今までとは、全然。  全身に力が入らなくなった頃。やっと解放された。 「は、ぁ……」  自分の肩に手を置きなんとか立っている俺を、エンドは無言で見下ろしている。  その顔には、いつもの……皮肉気に歪んだ唇。  ああ畜生。  こんな時でも、こいつは笑わない。  その事実の方が、こいつの仕打ちより悔しくて、唇を噛む。  血が滲むほど、強く。
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