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「おーい、しゅー!」
「ああ、ちょっと待ってな」
そうしてなんとか……俺がすごく頑張った結果、呼び名を受け入れてくれた遠藤の声がキッチンから聞こえる。
その声を聞きながら、俺はしきりに鼻をひくつかせていた。
周囲には、一面に甘い香りが漂っている。
何だっけな、これは。
すごく覚えのある、香り。
心が沸き立つような、そしてどこか少し緊張するような、そんな記憶が喚起される。
やがて用事を済ませたらしい遠藤がキッチンからひょっこり顔を出した。
「待たせたな」
「あ」
遠藤が運んできた皿の中にあったものを見て、俺は目を見開いた。
「これは――!」
「ああ、お前、すごく気に入ってたろ」
キャラメルポップコーン。
遠藤はその皿を、あの時一緒に観たいと思っていた映画のDVDと並べて置いてみせる。
なんて完璧な配備。
「なんで分かるんだよ。別にいらないって言ってたのに」
「ものすごい早さで一人で食ってりゃ、そりゃ分るさ」
遠藤は遠慮なしに大声で笑った。
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