第4章 300円のふたりきりの娯楽

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 あの時、コンビニのポスターで見かけた映画がDVDで発売され、一緒に見ようってことになった。  遠藤も、俺をこの映画に誘いたかったって聞いた。  だけど、ホストで案内した時に俺が不機嫌そうだったから、二の足を踏んでいたそうだ。  ああ、あの時は、機嫌よくしたら負けだって思ってたからな――  改めて当時の態度を反省したり後悔する。  とにかく、そんなわけで、そのDVDをレンタルし、遠藤の部屋で二人っきりで映画を見ることになった。  映画館に行くより安く上がるしな。  レンタル料金、300円。  3000万の貯金を目標としてる俺達には、丁度いい娯楽だろう。 「……肇」 「う、あ……!?」  ふいに遠藤が俺の腰を掴み、自分の方に引き寄せた。  後ろから密着して抱き締められる形になる。 「な、んだよ」  驚いたのと、それ以上に恥ずかしくてつい言葉が乱暴になる。 「折角二人きりで見るんだから。これ位いいだろ」 「よ、よくねーよ!」  慌てて身体を離す。 「全然、映画に集中できないじゃないか……」  言ってるうちに、遠藤の笑顔が萎んでいく。  べ、別に俺だって嫌ってわけじゃないんだけども……どうにも、まだ慣れなくて。  そりゃ毎日のようにそれ以上のことを繰り返してはいた。  だけど、こんな、まるで恋人のように密着されるのは……いや、間違っちゃいないんだけど……  ……そうだ。  遠藤の隣に座り、手を伸ばす。  そっと、遠藤の手に重ねて。少しずつ指を伸ばし、搦めて。 「こ、これくらい、なら……」  あ、失敗した。  少し声が上ずってしまった。 「……」  遠藤は何を思ったのか、俺の顔をまじまじと見つめる。 「……順番、変えてもいいか?」 「へ、何を?」  妙にいい笑顔で、訴える。 「映画を見て、食事して……って流れを」 「う、わっ!?」  手を引かれ、ごろりと横倒しになる。 「先に、こっちにしよう」 「や、おいちょっと……!」  倒れた俺に、体重をかけないよう注意しながら遠藤がのしかかる。  ポップコーンをのせた皿が転がり、やたらと甘い匂いをまき散らす。  その一つを取ると、遠藤は俺の唇に当てた。  優しく押し込むと俺の言葉を奪う。 「ん――」 「どっちも、いっぱい食わせてやるから。あの時とは比べ物にならない程」  甘い香りと笑顔越しに口付けられ、もう抵抗はできなかった。
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