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あの時、コンビニのポスターで見かけた映画がDVDで発売され、一緒に見ようってことになった。
遠藤も、俺をこの映画に誘いたかったって聞いた。
だけど、ホストで案内した時に俺が不機嫌そうだったから、二の足を踏んでいたそうだ。
ああ、あの時は、機嫌よくしたら負けだって思ってたからな――
改めて当時の態度を反省したり後悔する。
とにかく、そんなわけで、そのDVDをレンタルし、遠藤の部屋で二人っきりで映画を見ることになった。
映画館に行くより安く上がるしな。
レンタル料金、300円。
3000万の貯金を目標としてる俺達には、丁度いい娯楽だろう。
「……肇」
「う、あ……!?」
ふいに遠藤が俺の腰を掴み、自分の方に引き寄せた。
後ろから密着して抱き締められる形になる。
「な、んだよ」
驚いたのと、それ以上に恥ずかしくてつい言葉が乱暴になる。
「折角二人きりで見るんだから。これ位いいだろ」
「よ、よくねーよ!」
慌てて身体を離す。
「全然、映画に集中できないじゃないか……」
言ってるうちに、遠藤の笑顔が萎んでいく。
べ、別に俺だって嫌ってわけじゃないんだけども……どうにも、まだ慣れなくて。
そりゃ毎日のようにそれ以上のことを繰り返してはいた。
だけど、こんな、まるで恋人のように密着されるのは……いや、間違っちゃいないんだけど……
……そうだ。
遠藤の隣に座り、手を伸ばす。
そっと、遠藤の手に重ねて。少しずつ指を伸ばし、搦めて。
「こ、これくらい、なら……」
あ、失敗した。
少し声が上ずってしまった。
「……」
遠藤は何を思ったのか、俺の顔をまじまじと見つめる。
「……順番、変えてもいいか?」
「へ、何を?」
妙にいい笑顔で、訴える。
「映画を見て、食事して……って流れを」
「う、わっ!?」
手を引かれ、ごろりと横倒しになる。
「先に、こっちにしよう」
「や、おいちょっと……!」
倒れた俺に、体重をかけないよう注意しながら遠藤がのしかかる。
ポップコーンをのせた皿が転がり、やたらと甘い匂いをまき散らす。
その一つを取ると、遠藤は俺の唇に当てた。
優しく押し込むと俺の言葉を奪う。
「ん――」
「どっちも、いっぱい食わせてやるから。あの時とは比べ物にならない程」
甘い香りと笑顔越しに口付けられ、もう抵抗はできなかった。
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