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さくり、さくさく砂地は暑い
さくり、さくさく足とられ
ふらり、ふらふら浜まで行けば
我の連れ合い 舟を繰る
浜風海風、頭を撫でる
黒の我が髮 ほつれゆき
指も通らぬ 散らかりよう
「これを使えよ、我が母形見
今は身内はそなただけ」
受けとる 漆の櫛一つ
年期入った櫛一つ
我が貰いし 初めての
最後のものぞ ぬしからの
さくり、さくさく砂地に埋まり
ふらりふらりと揺れ歩く
そうして幾とせ過ごしたか
そうして幾晩交わしたか
今宵は最後 そなたの息が失せるとき
「俺はそなたに謝らぬとな」
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