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すぐさまヒンチが炭掻き棒で煙の元を叩き消した。
「何をしとるんだ。最近の若いもんは何も考えられんのか」
「何だジジイ。てめえケンカ売ってんのか!」
ジムとヒンチの間に、カーレンが割って入る。ヒンチに一度振り返ったあと、ジムの目を見て静かなトーンで言葉を発した。
「煙が上がれば、より奴らをこの小屋の周りに集めてしまう。火を熾す事はできない」
「じゃあ凍えていろっていうのか」
「君は薄着でいるからだろう」
「仕方ねえだろ、シェーンに貸しちまったんだから」
ジムは長袖のTシャツの袖を伸ばし、しかめっ面で横を向いて二の腕をさすった。
「倉庫にワシのコートがある。貸してやろう」
「いらねえよ。誰がジジイのコートなんか」
「意地を張っている状況ではないだろう。今夜は冷え込むだろうが、火は焚けない。君はずっとそのままでいるのか?」
カーレンの正論にジムが舌打ちをするのを確認すると、ヒンチは裏口近くの倉庫に入り、古ぼけた革のコートを引っ張り出してきた。お世辞にも綺麗とはいえないそれは、ブラウンの表面にうっすらと白いドット模様が浮かんでいた。
ヒンチは軽くコートを払い、ジムに手渡した。ジムはあからさまに顔をしかめる。
「カビだらけじゃねえか! ふざけんな! こんなの着ろっていうのか!」
「嫌なら薄着のままでいたらいいさ」
コートを仕舞おうとしたヒンチの横から、ジムはイライラした動作でコートを奪い取り、ブツブツ口の中で文句を繰り返しながらコートを何度も払って、ようやく諦めて羽織った。
「似合うじゃないか。それはやる。猟の時に着ていたやつだが、新しいのを新調したから構わんよ。熊と猪の革をなめしたワシ特製のものだから、丈夫だぞ。犬歯程度なら通らん」
「ヒンチさんが作ったんですか?」
マシュの言葉にヒンチは満面の笑みで頷いた。
「若い頃からものを作るのは得意でな。猟に使う道具や服は朝飯前だ」
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