7人が本棚に入れています
本棚に追加
「体力があるなしもある。精神状態も左右するだろう。今動ける者はカバーできる所をカバーしなければならない。これから疲労の度合いで動けなくなる者もでてくるはずだ。動けるうちに動かなければ」
「動ける人間は負担かかってもいいって事かよ、クレイヴン」
苛立ちがジムの言葉を強める。長髪を掻き上げるクレイヴンに鋭い目を向けた。
「負担と捉えるか助け合いと捉えるか、人間性がでるわね」
「何だとガキ」
「ガキはどっちよ」
「やめろ2人共」
睨みを効かせるジムと小柄な女性をクレイヴンが引き離すと、ジムは自分で蹴飛ばしたイスを荒々しく起て、足を組んで座った。
「フェイス」
フェイスと呼ばれた小柄な女性は、幾重にも腕に付けた輪状のアクセサリーを手で弄びながら鼻でジムを嘲り、腕を組んで壁にもたれかかった。
「ケンカをしてる場合じゃないでしょ。2階を片付けなきゃ。行こうマシュ」
エブリンに伴いマシュが2階に上がる階段を進む頃、上階からは外から聞こえる声と同質の音が流れ始めていた。
「また唸ってやがる。アイツ何とかしろよ」
ジムがより苛立ちを募らせる。2階からの唸り声は外のそれと重なり合う。
「友達でしょ。そんな言い方ないんじゃない」
「友達『だった』奴だ。今は死人だろ」
「……クズ」
ジムに聞こえないくらい小さな声でフェイスは囁き、エブリンとマシュが消えた2階の部屋に大股で歩いていった。その間もジムは頭を掻きむしり、まとまらない考えの中に身を浸すしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!