プロローグ

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「何だ、まだやっとらんかったのか」  嗄れ声が3人を叩く。  初老の男が猟銃を杖代わりに、マシュ達の後ろから部屋に入った。 「臭いが酷い。窓を開けられんというのは、こうも何と」 「僅かに空いてる隙間を埋めにきたんだ」 「また臭いの逃げ場が減るのか。ならいっそ、楽にしてやれ。なぁ、嬢ちゃん」  胸ポケットからタバコを取りながら、初老の男はシェーンの顔を覗く。 「ほぉら、嬢ちゃんも望んどる」 「シェーンは殺させないわよ、ヒンチさん」  エブリンの言葉に肩をすくめ、ヒンチはタバコに火をつけ、ゆっくりとくゆらせる。煙は逃げ場のほとんどない部屋にしばらく留まり、やがて宙で割れた。 「次から次へとワシの山小屋にきたと思ったら、こんな事になっとるもんまで部屋に入れて、全く迷惑な話だわい」 「それには感謝してます。僕らを助けてくれたんですから」 「助けも何も、お前さんらが勝手に入ってきたんじゃろが」 「でもシェーンは殺させない」  強い意志がこもったエブリンの声に、ヒンチは煙を吐きながら手を挙げた。 「やれやれ、ワシはお人好しだ。全く最近の若いもんときたら」  文句を言いながら部屋を出るヒンチの背中に、フェイスは『最近の年寄りときたら』と小声をぶつけ、ヒンチの真似と言わんばかりに肩をすくめた。
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