プロローグ

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 金槌や釘などを回収し、部屋から出る。扉を閉めてもシェーンの唸り声は戸板を通して聞こえていた。 「ねえ、ホントにあの子、そのままにする気?」  フェイスの言葉にマシュとエブリンは顔を見合わせた。 「もちろんよ。医者に診せなきゃ」 「医者? もうこの世界に何人医者が残ってるだろね」 「この町以外に、あの化け物達がいるって事かい?」  フェイスはため息をついた。この2人は、今あるパニックが町単位程度の規模だと思っているのだろうか。この小屋に来る途中で聴いたカーラジオのニュースでは、この『国』だけでは収まらないほどの被害があるように言っていた。自分の見立てでは、もうすでに世界中がこれの脅威に晒されているとふんでいる。 「どうする? 生きているのが私達だけだったら」 「そんな!」 「例えばよ、例えば。でも、ない話じゃない」 「やめてフェイス」 「つまり、気を抜いちゃダメって事」  フェイスは踵を返し、廊下を進む。隣の部屋の前に立つと、2人の方を向いた。 「ほら、とっとと全部終わらそう。コーヒーが飲みたいの」 「えっ?」 「補修よ補修。ほら早く」  慌てる2人を余所に、フェイスは扉を開けた。
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