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2階の補修作業を終えた3人は、1階へと降りた。暖炉を囲むリビングであった場所は、窓の補修に使う為に解体されたテーブルの残骸と、脚のがたつく何脚かのイスがあるぐらいで、ジムとカーレンはそれぞれ壁に寄りかかり、ヒンチは暖炉の前で揺りイスに座り、猟銃の手入れをしていた。クレイヴンは自分で持ち込んだバッグの中を漁っていた。
「ねえ、あの日本人は?」
フェイスの問いに、カーレンはトイレの方を顎で指した。と、同時に水の流れる音がした。
「やられてるわね」
「誰だってやられるよ、こんな状況じゃ。僕だってーーー
マシュは壁に寄りかかり、ゆっくりと腰を下ろした。
ーーーもう限界だ」
疲労が体だけではなく、この空間をも包み侵食していく。マシュとエブリンにジムとシェーン、タツヒロがこの山小屋に逃げ込み、5時間が経過していた。あとから着たクレイヴンとカーレン、フェイスでも3時間は経つ。
今は深夜12時。壁掛け時計の針は重なっている。自然と欠伸が出た。
「やめてよ、うつるじゃない」
そう言ってフェイスは大きな欠伸をした。
「皆、休むといい。少しでも体力を回復させておくんだ」
「クレイヴンも休んだらどうですか?」
「ありがとうエブリン。俺は構わない。大丈夫だ。それにかしこまって話す事はない。気軽に話してくれ」
クレイヴンは笑むエブリンに固形菓子を渡した。
「皆も1つずつ取ってくれ。何か腹に入れないと」
エブリンが回し渡すと、マシュは自分の分を取りにクレイヴンに近づく。クレイヴンはバッグのジッパーを締めながら、マシュに固形菓子を渡した。
「何故こんなものを?」
「俺とカーレンはちょうどこの山でキャンプをしていたんだ。アウトドア志向なのさ、俺達は」
「そのバッグはキャンプ道具?」
「ああ、さすがにテントまでは持ってこれなかったが、奴らに遭遇したのが荷物を広げる前でよかった」
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