第1章

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いかにも不審なその雰囲気に夏目が視線を外せないでいると、 顔を背けた男がいきなり歩き出した。 「……?」 夏目の視線の先で、 男は小路を曲がって直ぐに見えなくなった。 女主人がこちらを見つめているのに気づいて夏目が会釈した。 親しい付き合いは無いが近所ではあるし、 お互い顔くらいは知っている。 「あの……」 スクーターを喫茶店の前に停めた夏目が声をかけると、 白髪の混じった髪をひっつめにした彼女がびくんと身を震わせた。 「どうかしましたか?なんか今のひと、 ヘンでしたけど……」 気遣うように声をかければ、 まだ化粧前の薄い眉が顰められた。 「別に、 何も」 つっけんどんに言われて夏目が目を瞬いた。 さっと女主人が店に入って扉を閉める。
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