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いかにも不審なその雰囲気に夏目が視線を外せないでいると、
顔を背けた男がいきなり歩き出した。
「……?」
夏目の視線の先で、
男は小路を曲がって直ぐに見えなくなった。
女主人がこちらを見つめているのに気づいて夏目が会釈した。
親しい付き合いは無いが近所ではあるし、
お互い顔くらいは知っている。
「あの……」
スクーターを喫茶店の前に停めた夏目が声をかけると、
白髪の混じった髪をひっつめにした彼女がびくんと身を震わせた。
「どうかしましたか?なんか今のひと、
ヘンでしたけど……」
気遣うように声をかければ、
まだ化粧前の薄い眉が顰められた。
「別に、
何も」
つっけんどんに言われて夏目が目を瞬いた。
さっと女主人が店に入って扉を閉める。
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