第1章

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「お、 今日もいいお天気!」 新しい陽が射したばかりの早朝。 店の前を掃き清めていた夏目が、 ひとつ大きく伸びをした。 爽やかな風が細い川沿いに立ち並ぶ柳の葉を揺らして過ぎていく。 今日一日の晴天を早くも約束している晴れ渡った空に、 遠く鯉のぼりが泳いでいるのが見えた。 「おはようございます」 明るい声に振り返れば、 隣の絵蝋燭屋の若奥さんがにこにこと立っている。 嫁いできたのは半年ほど前だが、 いわゆる出来ちゃった婚だったらしくそのお腹がもう大きい。 「これ、 回覧板です」 「ありがとうございます」 「市内で空き巣が頻発しているから、 注意ですって」 回覧板を手渡しながら若奥さん。
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