第1章

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「そうですか……そちらも気をつけてくださいね。 日中は奥さんとお祖父ちゃんだけでしょう?」 絵蝋燭屋の倅は普通の会社勤めをしているサラリーマンだ。 蝋燭屋も俺の代で終わりだ、 と言うのはそこの主人の口癖になっている。 「大丈夫ですよ。 ウチなんて盗むものもないですもの」 色白の頬がにっこりと緩む。 「何かあったら、 いつでも声をかけて下さいね」 夏目の言葉に、 はいと頷いて。 若奥さんが店に戻っていく。 「秋月さん、 これ、 回覧板です」 戻ってきた店の中。 ああ、 とカウンターの中から手を伸ばして秋月が受け取る。 「女の人って、 子供が出来ると綺麗になるって、 本当ですね」 台拭きを手にとって、 しみじみと夏目。
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