第1章

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古い城下町。 その中でも柳小路のようにお城の外堀の内側、 つまりは城の敷地内にあった商家はしきたりや伝統に特にうるさいらしい。 夏目もここで働き始めたころは、 若奥さんが隣の庭の隅で泣いているのを見たことがあった。 それでも最近は表情がぐんと明るくなったのは、 やはりお腹の子供のせいだろうか。 「母は強し、 か」 使い古された言葉だけど本当だよねと、 夏目が呟いた。 「夏目、 もち米の水を切っておいてくれ」 「あ、 はい」 呼ばれて夏目が厨房に入った。 調理台の上の大きな笊には笹の葉が山盛りになっている。 秋月が瑞々しいその一枚を手に取った。
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