【始動編・ゲームの世界が壊れる刻 第6章】

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全て食べ切らずして支払いを済まし。 外に出たジョヒアは、歩いて近い“F・S・C”に向かう。 大通りにて、冬の寒い風に吹かれながら。 (こんな上手い仕事、何で名前も売れて無い俺に来たんだ? 他に、有名な奴だって居たろうに…。 ま、特定の人物を張って、様子を窺っただけで大金なら。 俺には、降って湧いた幸運だ) 西洋の古い格言には、 “幸運には、前髪しかない。 後ろ髪は無いから、すれ違った後に掴もうとしても遅いのだ” なんてのも在る。 ジョヒアは、昨年に探偵へ成ったばかり。 小さい大きいに関わらず、依頼が来た事には感謝だ。 ミラノ市内の大通りの一つで、最近の人気スポットに取り上げられる場所が在る。 其処は、F・Sが280台も在る、〔F・S・C〕《ファイナル・ステーション・カフェ》だ。 休憩待ち必死で、交代待ちが1時間は当たり前。 店内には、レトロなゲームセンターも在るから、若者だけではなく。 ゲームに慣れ親しんだ中高年も来るし。 ジムやファストフード店も入る為、人が集まる為に警察も出張所が在り。 警備員と交代で、常に見回りへ来る。 然し、このジョヒアは、そういった場所には興味が無い。 デパートの様な大きさで、外観はパブリックな構えをする総合商業施設に来ると。 (夜の7時を回って、いよいよ大人まで集まるからって、交差点から渋滞気味か? ゲームなんて、時間の無駄だろうが) 元は研究者だったジョヒアからして、人生の大切な時間を遊びの疑似体験に使うなど気が知れない。 それならばまだ、チェスやリバーシで遊ぶ方が良い。 (ターゲットは・・エステファン・カロネオ。 42歳、動物飼育係…) 顔写真付きの履歴書類が、そのままメールには添付されていた。 天辺禿で、垂れ目男だ。 信号が変わってから交差点を渡り。 回転ドアを若い女性と入れ違いに抜けて、人混みと成るエントランスに。 白黒のチェックタイルが床の模様で、壁には様々なインフォメーションが、映像として流れ。 正面には、上下に行くエスカレーターが片側3台ずつ。 (F・S・Cは・・3階と4階…) インフォメーションから、F・S・Cの在る階を確かめた。 その時だ。 (あっ) エスカレーターに向いた瞬間、2階からエスカレーターでエントランスに降りて来た人物が、まさにターゲットだった。 (向こうから来たぞ。 捜す手間が省けたな)
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