【始動編・ゲームの世界が壊れる刻 第6章】

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人の多い所が苦手なジョヒアだから、向こうから姿を見せてくれるのは有り難い。 然し、ターゲットの男性は、金も払わずして外へ。 (ん?) 疑問に思ったジョヒアは、通り掛かった若い女性に。 「済まない」 「え?」 「F・S・Cって所は、金を払わずに出入りが出来るのか?」 と、尋ねれば。 赤いセーターのワイヤレスイヤホンをする女性は、片側のイヤホンを外す。 「何か?」 「F・S・Cって処は、金ナシで遊べるのか?」 「あぁ。 F・Sで遊ぶには、首や肩にDNAチップを埋める必要が在るの。 DNAチップは、クレジット機能も有るから、支払いはゲートを通れば一発決算よ」 「なるほど、有り難う」 答えを貰ったジョヒアは、ターゲットを追って外へ。 歩道に舞い戻って左右を見渡せば、交差点の赤信号に捕まっていたターゲット。 (さて、何を見張ればいいのやら…) と、思ったのだが…。 「う゛っ…」 ターゲットが、信号前で軽く前のめりに。 真横では無いが、他の歩行者と一緒に信号前に来たジョヒアは、 (風邪か?) と、注視した。 そして、その直後で在る。 「うあっ!」 ターゲットの男性は振り向いて、間近に居たダッフルコートの若者に掴み掛かったではないか。 (何だっ?!) 突然の事に、ジョヒアも目が固まった。 ターゲットの中年男性に押し倒されたダッフルコートの若者は、激しく後頭部を路面に強打する。 処が、その後にターゲットの中年男性は、そのダッフルコートの若者を容赦なく殴り始めた。 その光景を見た他の歩行者は、事態が尋常では無いと察し。 「おっ、止めろっ!」 「ちょっとっ」 「何だコイツっ!」 皆が、ターゲットの男性を抑え、若者を殴りつけるの止めさせようとする。 だが、急に狂暴化したターゲットの男性が、若者から引き離された時。 路上へと倒れた若者は小刻みに震えて、他の者が声を掛けても起き上がらない。 (舗装された地面に彼が頭を打ったのに、そのままを殴った…) 脳内に損傷が在ると、ジョヒアは直ぐに理解する。 その若者の様子を探ろうと、近寄ろうとするが…。 「うぎゃっ!」 と、別の叫び声が湧き上がった。 (んっ?) 声にビックリしたジョヒアが前を見れば、ターゲットの男性は別の男性に噛み付いていた。 (おい・・おいおいっ! これが調査の本命かっ?)
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