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人の多い所が苦手なジョヒアだから、向こうから姿を見せてくれるのは有り難い。
然し、ターゲットの男性は、金も払わずして外へ。
(ん?)
疑問に思ったジョヒアは、通り掛かった若い女性に。
「済まない」
「え?」
「F・S・Cって所は、金を払わずに出入りが出来るのか?」
と、尋ねれば。
赤いセーターのワイヤレスイヤホンをする女性は、片側のイヤホンを外す。
「何か?」
「F・S・Cって処は、金ナシで遊べるのか?」
「あぁ。 F・Sで遊ぶには、首や肩にDNAチップを埋める必要が在るの。 DNAチップは、クレジット機能も有るから、支払いはゲートを通れば一発決算よ」
「なるほど、有り難う」
答えを貰ったジョヒアは、ターゲットを追って外へ。 歩道に舞い戻って左右を見渡せば、交差点の赤信号に捕まっていたターゲット。
(さて、何を見張ればいいのやら…)
と、思ったのだが…。
「う゛っ…」
ターゲットが、信号前で軽く前のめりに。
真横では無いが、他の歩行者と一緒に信号前に来たジョヒアは、
(風邪か?)
と、注視した。
そして、その直後で在る。
「うあっ!」
ターゲットの男性は振り向いて、間近に居たダッフルコートの若者に掴み掛かったではないか。
(何だっ?!)
突然の事に、ジョヒアも目が固まった。
ターゲットの中年男性に押し倒されたダッフルコートの若者は、激しく後頭部を路面に強打する。
処が、その後にターゲットの中年男性は、そのダッフルコートの若者を容赦なく殴り始めた。
その光景を見た他の歩行者は、事態が尋常では無いと察し。
「おっ、止めろっ!」
「ちょっとっ」
「何だコイツっ!」
皆が、ターゲットの男性を抑え、若者を殴りつけるの止めさせようとする。
だが、急に狂暴化したターゲットの男性が、若者から引き離された時。 路上へと倒れた若者は小刻みに震えて、他の者が声を掛けても起き上がらない。
(舗装された地面に彼が頭を打ったのに、そのままを殴った…)
脳内に損傷が在ると、ジョヒアは直ぐに理解する。 その若者の様子を探ろうと、近寄ろうとするが…。
「うぎゃっ!」
と、別の叫び声が湧き上がった。
(んっ?)
声にビックリしたジョヒアが前を見れば、ターゲットの男性は別の男性に噛み付いていた。
(おい・・おいおいっ! これが調査の本命かっ?)
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