【始動編・ゲームの世界が壊れる刻 第6章】

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近づいて屈もうとしたジョヒアの少し先では、狂犬の様に他人へと噛み付いた事で。 彼を取り押さえ様とした人々もパニックと成り、慌てて転がりながら離れる。 一方、ターゲットの男性は、‘食べる’と云うよりは、‘噛みつき捲る’と云った具合で。 太った大柄男性の顎や顔を噛み付き。 掴まれた手が離れると、何度も殴った。 「くっ、狂ってるっ」 「警察を呼べっ!」 「逃げろっ、早く逃げろっ!」 通行人の各々が、様々に言って逃げる。 車の進行を邪魔し、車の影から対向車線に飛び出し轢かれる者も出た。 爆弾テロが起こったみたいに、交差点に居る通行人が散る。 進行を邪魔されて、文句を言う為に運転手が車より出た所で、狂った血まみれの男性を見る。 「わっ、わぁっ!」 慌てて車に戻るその背に向かって、ターゲットの男性は襲い掛かった。 ジョヒアは、何が何だか解らないままに、依頼主の元へと貰ったスマホで電話を掛けた。 そして、狂犬の様なターゲットの様子を報告した瞬間、彼の持つスマホが爆発した。 狂った人間と、爆発して死ぬ人間。 異常な事件で、交差点の一帯は大パニックと成った。 狂った男性は、路上まで飛び出し。 避けた車が玉突き事故を起こす。 その後、女性を襲って殴り殺したターゲットの男性は、警官に射殺された。 …。 イタリアの時間で、夜の8時過ぎ。 このニュースで、TVは一色。 そして、白い特殊な施設内にて。 あの黒人女性が立つフィールドを回る映像には、その光景を中継で映す。 だが、黒人女性には、その事件の中継など全く見ない。 彼女の様子からすると、経過や被害に関心が無いらしい。 ‘あの男性が狂った’ その事実が必要で在って。 それ以外の事は、どうでもいいらしい。 然し、どうやら彼女の撒いた狂気の種は、イタリア一カ所では無いらしい。 黒人女性が、他のデータを見る中で。 彼女の周りを回る様々なウィンドウの一つ、真っ黒で何も映らないものより。 「此方、UAEの監視員。 フューリープログラム発症者を確認しました」 「此方、イギリスのロンドンより。 フューリープログラムの発症者、目視にて確認しました」 「此方、ブラジルの監視員。 フューリープログラムの発症者、確認しました」 次々と、日付が日本より前日の国々で、こんな内容の報告が為される。
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