【始動編・ゲームの世界が壊れる刻 第6章】

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然し、朝の7時を回り。 再度、話し合いの行われる会議室へと向かうのだが…。 国会内へと入った議員は、秘書と赤い絨毯の引かれた廊下を歩く。 処が、歩いて行く内に、 「う・・うぅん」 秘書の前を行く議員が、唸る様な声で喉を鳴らした。 (うがいもしないで居るから、風邪でも引いたか? 喉が痛いならば、早めに薬を飲ませるか…) 秘書は、先にトイレへ行くと言った議員に、トイレで薬を渡そうと思う。 其処へ、トイレを目指して、野党の急先鋒に立つ中年男性の議員が、向こうから歩いて来るではないか。 実は、非常に不思議な事態だが。 衆院選で、辛くも与党は勝ちはしたのが。 野党の連立が、拮抗している状態で。 まさか、選挙からひと月半の間に、現職の議員が立て続けて4人も死んでしまい。 更には、公職選挙法違反で、2人が辞職する。 その結果、衆院の与党が過半数割れを起こすなど、予想もしてない。 来年の補欠選挙が行われるまでは、危うい綱渡りを強いられる与党だと云うのに。 こんなアホな議員も居るとは、秘書も頭が悩ましい限りだ。 相手を見た秘書は、真面目で正義感の強い野党の急先鋒に立つ議員と。 この親の七光りで議員を遣る人物は、まさに‘水と油’だと思い。 (おいおい、トイレの中でも絡むなよ。 三流大学出のお前が、一流大学を自力で卒業した奴に無駄口を叩けば…) イヤミも籠もった感情を思う途中で、突然に与党議員が走り出した。 (あ、我慢が成らなかったか?) トイレに急ぐのだと思うその秘書の視界の中で、呻き声を上げた与党議員が何かを取り出した。 それが、胸に刺さっていたペンと解った時。 「う゛あああああああーーーーーーーっ!」 野党の急先鋒に立つ議員に襲い掛かる与党議員。 (え?) 与党議員の秘書は、目の前で起こる様子に固まった。 胸に刺して在ったペンを握った与党議員は、擦れ違う処まで行ったと思ったら。 野党議員に襲い掛かって、相手の眼にペンを突っ込んだ。 (ウソ・・だ) 愕然とした秘書は、力が抜けて膝を崩す。 態度は悪いが、大それた事など出来ない中年男性と。 自分の仕える与党議員を認識していたのに…。 野党議員の女性秘書が悲鳴を上げて、警備員が走って来る。 その後、警備員も負傷させた与党議員は、8人の警備員に因り取り押さえられた。
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