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確かに、事故の真相は、今だに解らずじまいだ。
「ホストさん、本当に隠蔽されたんです。 確か・・10年前、イベント事故の少し前だと思いますが。 事前の非公式な安全性説明発表にて、F・Pのセキュリティーは完璧だったとか」
「事故を起こしたのに、‘完璧’・・ね」
皇輝には、まるで役所仕事のなあなあ説明に思えた。
だが、捜索の手を止めるジョンは、
「ホストさん、この説明の内容は嘘じゃなく。 それなりにしっかりしたデータに基づく末の、自信に満ちた発表だったんですよ」
「データに基づくって・・どんな?」
「実は、あの説明会の半年ほど前でしょうか。 F・P開発元の両社は世界中の優秀なハッカーを募って、F・Pのセキュリティー突破を依頼し。 その成功報酬に、50億と云う多額の懸賞金を掛けたそうです」
「50億・・すごい大金だね?」
用具入れの場所を見た皇輝は、ドアを開いたままに、手を止めるジョンを見た。
だが、止まってばかりも居られないと。 歩いてベンチに向かうジョンは、非常に語り口も冷静で在り。
「はい。 でも、世界最強のハッカー集団ですら、そのセキュリティーを突破が出来ず。 また、その直後にはハッカーの使用した手口を、F・Pのマザーコンピューターが解析し。 F・Pのセキュリティーシステムは、新たに学んで更にセキュリティーレベルを自動で高めたと。 当時の開発部から、発表が有ったんです」
「事実なのかい?」
「事実です。 ハッカー達は、報酬よりプライドを傷付けられた様で。 その後、自作の新たな手段を用意して、秘密裏にセキュリティー突破を目指しました。 然し、その悉くがバレたそうです」
用具入れのドアを閉めた皇輝は、品川方面の端に向かいながら。
「F・Pの頃のマザーコンピューターって、そんなに凄いAIなのか…」
と、衝撃すら受けた。
「と、云いましょうか。 それぐらいの性能が無ければ、こんな精神的に直接働き掛けて遊ばせる様な。 かなり危険な事をさせられませんよ」
大人顔負けの冷静さで、皇輝に言ったジョン少年は、更に。
「そのF・Pのマザーコンピューターがですよ。 あの10年前の事故後に、開発部の発表した程度の不具合やコンピューターウィルスで、麻痺する筈が無いですよっ」
ジョン少年の物言いが、此処で珍しく強く成った。
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