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「いくぞ」
「どうぞ、マスター」
リアは頷きながらいつもの“ご主人様”とは違う言葉でこたえた。実験の時や任務の時はマスターと呼ぶようしつけられている。
「……プログラムナンバースリー、セットオン」
その言葉と同時に左手で小気味のいい音を立てながらキーボードを叩き、右手でモニターに表示されたマーカーを軽く押す。途端に筐体から光が発せられ、リアのつけている器具に吸収されていった。
光が落ち着くと、筐体の中には何も入っていなかったかのように空になっていた。ソルトがモニターに写ったマーカーを押す。リアが装着していた器具が全て一斉に外れた。
「どうだ?」
「またパワーアップしちゃいましたあ」
「最近不法侵入が増えてるから後で外の巡回するぞ」
「はあーい」
椅子から立ち上がりながら彼女は明るく答えた。
おそらく、ソルトを頼ってきた亜種人。しかし彼は事前に手紙を出したものしか迎え入れない。そして、不法侵入する者は容赦なく殺す。不法侵入できるのは、亜種人のみ。ふるいにかけることで、より精度をあげている。亜種人のみを殺す精度を、だ。
「騎士様」
途端にリアがそんな単語をつぶやいた。ソルトは眉間にしわを寄せる。
「あっ、違うんですぅ、今のはリアの中の亜種人がぁ」
「……騎士の肩書などとうの昔に捨てた。不愉快だ」
「すみませぇん……制御できるようにしておきますぅ」
吐き捨てるようにいう言葉に、リアは文字通りしょんぼりとうなだれた。言い過ぎたか、とソルトは思ったが、いつもどこか抜けているリアのことだからこれくらいは許されるはずだ、と考え直し先ほどの椅子へと座り直した。
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